スペイン語へようこそ
世界に広がるスペイン語
スペイン語は、現在のところ、スペインはもとより、赤道ギニア共和国、ラテンアメリカ18カ国(アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、コスタリカ、キューバ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、ドミニカ共和国、ウルグアイ、ベネズエラ)+プエルトリコ(米国自治連邦区)の公用語となっています。また、アメリカ合衆国の南部および西部の諸州でも広く用いられ、ニューメキシコ州では事実上の公用語となっています。また、セルバンテス協会やその他の報道によると、フィリピンでも1973年に失った公用語の地位が復活される見通しであるとのことです。これらの国々や地域のほかにもスペイン語が話される地域は世界中に広がっています。
スペイン語を母語とする人々の数は世界中で約4億人と算出され、そのうちスペイン語を公用語とする国や地域に住む人は約3億6千万人、公用語としない国や地域に住む人が約4千万人います。母語として話される言語としてのこの数字は、中国語に次いで世界第2位の値です。さらに、スペイン語を母語としないスペイン語の話者が世界中に約2千3百万人いるとされています。スペイン語は英語に次いで世界で2番目に多く学ばれている言語でもあります。スペインのマドリードに本部を置くセルバンテス協会が、第2言語としてのスペイン語の普及を目指して世界各地に支部を展開中です。
スペイン語の重要性は、国際連合の6つの公用語の一つに数えられていることからも明白ですが、国連以外にも、国際刑事警察機構(ICPO)や欧州連合(EU)、米州機構(OAS)、南米諸国連合(UNASUR)、アフリカ連合(AU)や国際サッカー連盟(FIFA)などの国際機関で公用語と認められています。スペイン語は、英語に次ぐ世界言語として政治や経済の分野で重要な役割を果たす可能性を秘めた言語ですが、その魅力はそれだけではありません。スペイン語が話されている広大な空間には多種多様な人々が住み、それぞれが独自の文化を形成しています。スペイン語を学んで直にそれらに触れてみようではありませんか。
スペイン語の歩み:「片隅の地」の言語から“世界言語”へ
私たちが一般にスペイン語と呼んでいる言語は、カスティーリャ語el castellanoと称され、ローマ人たちの話し言葉、いわゆる俗ラテン語から派生した言語です。もう一つの名称であるel españolは、イベリア半島のラテン語名であるヒスパニアHispaniaの形容詞形 hispaniusから派生した中世ラテン語hispaniolusに由来します。イベリア半島はローマ時代にはヒスパニアと呼ばれ、哲学者セネカや五賢帝のうちのトラヤヌス帝やハドリアヌス帝などを輩出するなど、ローマ世界のなかでも政治的、文化的に重要な地域でした。
5世紀下四半期に西ローマ帝国が崩壊し、西ゴート人たちの支配する時代になると、文語ラテン語は、教養人の間では知識伝達の手段であり続けましたが、一般の人々の言語活動への影響を次第に減じていきました。そして、俗ラテン語が後の半島ロマンス諸語の母体となります。 8世紀初頭にイスラム教徒の侵入により西ゴート王国が滅亡した後、北部のキリスト教徒の支配地域では、俗ラテン語がそれぞれの地域の言語環境に即して次第にロマンス諸語(カタルーニャ語、アラゴン語、アストゥリアス・レオン語、カスティーリャ語、ガリシア・ポルトガル語)へと独自の発展を遂げて行きました。カスティーリャ語は、現在のブルゴス県、ラ・リオハ県、アラバ県、ログローニョ県、カンタブリア県が隣接する地域で成立したとされています。この地域はアストゥリアス王国および後のレオン王国にとって、イスラム教徒の攻撃から王国を防衛するための最前線であり、数多くの城砦が建設されたことからカスティーリャ(「城砦の地」の意)と呼ばれました。カスティーリャ語の名称もこの「片隅の地」カスティーリャで形成された言語であることに由来しています。カスティーリャ語の最古の文書は、一般に10世紀末のサン・ミリャン・デ・ラ・コゴーリャ(ラ・リオハ県)の聖エミリアヌス修道院で発見された『サン・ミリャン注解』とされています。
カスティーリャ語は、カスティーリャ地域が伯領から王国へと政治的、軍事的発展を遂げるなか、さらにカスティーリャ王国がレコンキスタ活動の進展にともなって版図を拡大していくにつれ、その分布領域を半島の南部へと広げていきました。13世紀の後半、アルフォンソ10世の治世には、それまでラテン語がもっぱら用いられていた様々な学問分野で使用されるようになり、カスティーリャ王国の“国語”としての地位を高めました。トレドでは、12世紀以来の翻訳活動の伝統(アラビア語からラテン語へ)に代わって、カスティーリャ語への翻訳が盛んになりました。カスティーリャ語は語彙面でアラビア語から大きな影響を受けており、アラビア語からの借用語が6000~8000語あると言われています。
15世紀末、1479年にはカスティーリャ王国とアラゴン連合王国の王朝的統合により近世国家スペインが成立し、カスティーリャ語はスペイン王国を代表する言語、すなわちスペイン語として新たな時代を迎えることになります。1492年には、イスラム教徒の最後の牙城グラナダの陥落によりほぼ8世紀の長きにわたるレコンキスタが完了したほか、ユダヤ人の追放や新大陸の“発見”といった歴史的大事件が生じましたが、この年は、当時のカスティーリャの人文主義者アントニオ・デ・ネブリッハがヨーロッパ最初の国語文法書となる『カスティーリャ語文法』をイサベル女王に献上した年でもありました。現在のものとほとんど変わらないイベリア半島の言語分布が完成するのもちょうどこの頃のことでした。その後、カスティーリャ語は「帝国の伴侶」として、カリフォルニアからマゼラン海峡に至る新大陸の大部分の地域へ、さらにフェリペ2世の時代にはフィリピンにまで広まりました。「太陽の没することなきスペイン帝国」のもと、ヨーロッパ、アメリカおよびアジアでも話される最初の“世界言語”となったのです。
本教材の構成
本教材はスペイン語を学ぶために、必要な基礎知識を習得する第0課、文法学習を行う第1課から第12課、そしてそれらに対応する問題集で構成されています。
どの課においてもスペイン語の記述には、実際の発音を確認出来る音声データを付加していますので、文法学習と並行して発音やヒアリングの独習も可能です。