色とりどりの牛乳パック
外国のスーパーマーケットを“散策する”ことはとても楽しいですよね.それにその国の,特に食文化を知るうえには,非常に重要なことと言えるでしょう.「これは何?」あるいは「どうしてこんなにたくさんの種類が?」など驚かされることがたくさんあります.
デンマークのスーパーマーケットでも然りで,スキットにあったように,何に使うのかさっぱり分からない道具などを目にすることもありますし,日本で売られているものであっても,その形態が違ったりすることもよくあります.
その中でも一際目を惹くものが,乳製品売場です.乳製品の種類の多さにも驚嘆しますが,特に「色とりどりの牛乳パック」は非常に印象に残ります.ただこの「色とりどりの牛乳パック」,単にいろんな種類の色の牛乳パックがあるというのではなくて,牛乳の種類別に色分けされている結果です.
牛乳の種類
音声
色
写真
説明
skummetmælk
灰色
脂肪分:約0,1%
minimælk
灰色がかった水色
脂肪分:約0,5%
letmælk
水色
脂肪分:約1,5% - 1,8%
sødmælk
濃い青色
脂肪分:約3,5%以上
kærnemælk
緑色
バターを作るためにクリームを撹拌(かくはん)した際に残る,低脂肪(約0,5%)の酸っぱい味のする牛乳
tykmælk
オレンジ色
脂肪がむらなく溶けた状態で,約90度の高温殺菌をした状態のsødmælkを,乳酸菌で発酵させたもの.
piskefløde
赤色
泡立てて生クリーム(ホイップクリーム)などに使われるクリーム(脂肪分:約38%)
この他にも,kakaomælk(ココア味牛乳)やkaffefløde(脂肪分:9% - 13 % のコーヒーや紅茶に使われるクリーム),madlavningsfløde(脂肪分:18% の料理用のクリーム)などもあります.(kaffeflødeやmadlavningsflødeは,脂肪分が低すぎて,どんなに一生懸命泡立てても,生クリーム(ホイップクリーム)にはなりません!)
上記の表に見られる牛乳パックの色分けは,1964年に乳製品製造業者たちの間で,どの色をどの牛乳に付けるのかということについて,合意が得られたことに始まるそうです.これは,「消費者がどの業者の製品であろうと,簡単に必要な牛乳あるいは乳製品を見つけられるように」するためでした.その当時は,上記の表にあるほど,牛乳の種類は多くなく,「sødmælkは青色,piskeflødeは赤色,そしてkærnemælkは緑色」という申し合わせがあるだけでした.その後,letmælkやminimælkなどが増えて,現在の状態になっています.
つまりこの「牛乳パック色分け制度」は,何らかの規則や法律によって定められているものではなく,乳業者たちが自らその習慣に従っているというものです.ただ,やはり他人とは違うことをしたいと思う人々もいて,これまでにこの「牛乳パック色分け制度」に逆らって,独自の色分けを行なった業者もいたようですが,やはり消費者の混乱を招くだけの結果に終わり,成功はしなかったようです.